夏のロケット

夏のロケット」を読んでワクワクした。

スーツを脱ぎ捨て、ぼくらは再び宇宙をめざすか。火星小説マニアだった“ぼく”は新聞社の科学部記者になり、過激派ミサイル事件を追っている。事件は高校時代の仲間へと彼を導く

ミステリー賞を取っているが心躍る青春小説。

高校の同級生が30歳を過ぎて起こす(巻き込まれる)サスペンス。少年だった自分が夢見ていた頃の気持ち、大人になって突きつけられた現実、同じだけの時間を過ごした仲間のことを思いながら、イッキに読まされた。

海の日を絡めた3連休は友達と海遊びに出かけた。その間にも気軽に楽しめそうと選んでこの1冊を持って行き、海辺や友達が寝静まった後に読んだ。このシチュエーションも大正解で、ロケット打ち上げのところでボロボロと涙がこぼれたのは酔っ払いだったからだけじゃないはず。久しぶりに澄んだ気持ちで夜空を見上げた。

夢は叶えるもの…だよなー

ロケット絡みで、アニメ「オネアミスの翼」やマンガ「プラネテス」を思い出した。どちらもお良作なので夏のうちに観返して紹介したいところ。

トリツカレ男

トリツカレ男」を読む。

ジュゼッペのあだ名は「トリツカレ男」。何かに夢中になると、寝ても覚めてもそればかり。そんな彼が無口な少女に恋をした。

優しい文体と軽快な展開、あっという間に読み切ってしまった。そして、もう1度最初からパラパラ読み返したくなる、そんな面白さのある物語。子供の頃に読んだなら、何かにトリツカレることの素晴らしさを知るだろう。今の自分が読むと、何かにトリツカレることが、もう随分ないなと知る。

実は、たまきさんのブログの感想を読んで、きっと僕はこう感じるのではないかと思っていた。これはちょっと淋しいやね。

熱し易く、冷め易い。けど、熱し方が中途半端な今日この頃の自分。トリツカレるなんて、ほんの些細なことから始まるもの。今、しっかり生きつつ、もう少し目線を上げて、その些細なことを見逃さないようにしよう。

あ、トリツカレるほど好きな人はいるな、身近に。たくさん。

伝わる・揺さぶる!文章を書く

伝わる・揺さぶる!文章を書く」を読む。これはスゴイ本。

単なる文章のテクニックをこえ、自分の頭で考え他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、コミュニケーションの本質に迫る一冊である。

評判を聞いて気軽に読んだが、深い感銘を受けた。油断してた。

文章を書くと銘打っているが、書くという目的を設定して上で、論理的思考法を説いている。この思考法こそが主旨で、この本を読めば、書くことに限らず、自分のコミュニケーション能力全般に影響を受ける。

しかも文体はとても明解、簡単なのですぐに読める(←ここ重要)。解説や具体例は少々おせっかいと思えるほど丁寧。著者が高校生の小論文指導に長年携わってきた結果なのだろう。

5章から成り立つ本書の内、2章が重要。ここで、いかに文章を書くか、つまりいかに物事を人に伝えるかの要件が語られる。それ以外の章は、この論理を利用するための復習と応用のためにある。上司の説得文、自己推薦文、詫び状、メールなどの書き方は、論理を実践するための例題集と言える。

エピローグに書かれていた印象的な著者の言葉。

相手という個性に、自分として向き合ったとき、自分の中に湧き起こってくるものがある。その相手だからこそ言いたいこと。自分にしか言えないこと。そういうものに、私たちはもっと忠実になっていいと思う。

これを読んで仕事でもプライベートでも、人と口論した時をいくつも思い出した。お互いの論点は合っていたのか、自分は論拠を示していたのか、そもそも伝えるべき意見を持っていたか。せっかく言葉を交わせる人がいるのなら、より有益な時間を過ごしたい。

虚数

今春、永眠したスタニスワフ・レムの著作を読み返す。彼にノーベル文学賞を。

虚数」はお薦めの名著。

短編集で、架空の書物の序文集4冊分、コンピュータ「GOLEM 14」による講義集、の2つのパートにより構成されている。

4冊の書物とは、人体を透視することで人の存在意味を考察するレントゲン写真集「ネクロピア」、バクテリアに英語を教える過程で予知能力を発見してしまった生物学者の研究記録「エルンティク」、人の手によらずコンピュータが生み出す文学作品「ビット文学の歴史」、未来予測コンピュータが絶えず執筆する百科事典「ヴェストランド・エクステロペディア」。

もちろん全て実在しない書物で、それらの序文だけが記されている。存在しない書物と架空の序文、ありえないものを組み合わせた時、目の前に不思議な世界観が現れる。掛け合わせると「-1」まさに虚数のごとく捉えようのない物語達。

そして、圧巻の「GOLEM 14」

人間を遥かに凌駕する人工知能コンピュータが、人類に向けて行った講義録。これを読むと、SFと言うより哲学的に語られた未来や宇宙を感じる。想像を超えた知的な試みには驚嘆するばかり。この本は1973年に書かれているが、30余年たってなお全く色あせない魅力ある内容だ。

レムの凄さを知るためにも、ぜひ手にとりたい1冊。凄いよ。

犬の名はシュール、猫の名はピコ

シュールとは、

  1. シュールレアリズムの略。超現実主義。夢や幻想など非合理な潜在意識界の表現により、人間の全的解放をめざす 20 世紀の芸術運動。
  2. 言うなれば「超」の部分にあたる。
  3. テレビ番組「うごうごるーが」に登場するキャラクター。
  4. 超偉大な犬の名前。シモムラ・シュール。

ピコとは、

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親父の味、グリーンガム

お袋の味ならぬ、親父の味、グリーンガム。

幼い頃の記憶を辿ると、酒もタバコもやらない父の嗜好品はチューイングガムだったと思う。今も好きなのかな?

当時、車で遠出をする時、僕と弟妹はサクマドロップを一缶買ってもらって、フルーツ味の一粒に出会えれば文句なし。ハッカ味の一粒に当たってしまったら母に引き取ってもらっていた。

因みにハッカ味とレモン味のドロップは同じような白色で見分けが付き難かったから、口に入れてからハッカ味と判ると押し付けて?いた。ごめんよ、母さん。

ミント味、ハッカ味、辛いのは大人の味。それを美味しそうに食べる両親は、それはそれは大きい存在なのだ。

でもある時、自分がねだったのか、父がくれると言ったのか、覚えてはいないけど、グリーンガムを口にした。今でもその時の気持ちを思い出すことができる。初めてビールを飲んで、苦いと感じつつ、これが旨いのだと自分に言い聞かせているような、そんな感覚を。大人の階段をひとつ上った瞬間っすよ。

今日、当時のままの「復刻版グリーンガム」「復刻版クールミントガム」を買ってみた。ガムの甘味料と言えばキシリトールの昨今、原料を見ると砂糖、水あめ、ぶどう糖だって。噛んでみたら、とてもとても甘かった。

些細なことだけど、自分も少し大人になったじゃんと思った。少しは父に近づけたかね?

読書について 他二篇

読書について 他二篇」を読む。

本は他人の思考の結果であること、多読は精神から弾力性を奪うこと、自身で思索することの重要性をくり返し説く。

100年も前に書かれたものだが、情報に溢れる現代を予見していたかのごとき意見に溢れている。痛烈な彼の言葉は、はじめ耳に痛く、やがて僕の中で偉大な財産へと変わった。斎藤忍随による良質で読みやすい訳、あとがきも含め、自信を持ってお薦めできる名著。この本を丸ごと、読書にまつわる名言としたいほどである。