虚数

今春、永眠したスタニスワフ・レムの著作を読み返す。彼にノーベル文学賞を。

虚数」はお薦めの名著。

短編集で、架空の書物の序文集4冊分、コンピュータ「GOLEM 14」による講義集、の2つのパートにより構成されている。

4冊の書物とは、人体を透視することで人の存在意味を考察するレントゲン写真集「ネクロピア」、バクテリアに英語を教える過程で予知能力を発見してしまった生物学者の研究記録「エルンティク」、人の手によらずコンピュータが生み出す文学作品「ビット文学の歴史」、未来予測コンピュータが絶えず執筆する百科事典「ヴェストランド・エクステロペディア」。

もちろん全て実在しない書物で、それらの序文だけが記されている。存在しない書物と架空の序文、ありえないものを組み合わせた時、目の前に不思議な世界観が現れる。掛け合わせると「-1」まさに虚数のごとく捉えようのない物語達。

そして、圧巻の「GOLEM 14」

人間を遥かに凌駕する人工知能コンピュータが、人類に向けて行った講義録。これを読むと、SFと言うより哲学的に語られた未来や宇宙を感じる。想像を超えた知的な試みには驚嘆するばかり。この本は1973年に書かれているが、30余年たってなお全く色あせない魅力ある内容だ。

レムの凄さを知るためにも、ぜひ手にとりたい1冊。凄いよ。

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