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  • シュールな短編集「世界の涯まで犬たちと」を読む

    アーサー・ブラッドフォード「世界の涯まで犬たちと」を読む。

    日経、日曜日の読書ページで知って手にとる。書評を先に読んだおかげで、タイトルから感じるような心温まる内容ではないことは判っていた。帯や多くの書評にあるように、とてもシュールな内容。

    三本足の犬や1ダース全てが奇形の仔犬たち、ナメクジ、ネコ。物語の中で、それらの少し(いや、かなり)変わった存在は脇役である。彼らは主役である人の足りない部分を補う大きな要素として存在する。とてもグロテスクなのだけど、それこそが日常なのだと気付かされる。そんな世界を描けるのは小説ならではの醍醐味だ。

    O・ヘンリー賞ってのをとっている有名作らしい。僕にとって素直に受け入れられる作品ではなかったが、とても印象的な短編集だった。

  • 第三版を期待して「エヴァンゲリオン用語事典」を読む

    エヴァンゲリオン用語事典」の第二版を読む。

    第一版との違いは劇場版エヴァンゲリオン(否、ヱヴァンゲリヲン)まで網羅していること。10年経って新劇場版が公開されている昨今。序破急の末はやはり「キモチワルイ」で終って欲しいと思う元祖エヴァ世代です。

    これ、エヴァという物語を楽しむ上ではよくできている。もともと旧約聖書の世界観を相当に取り入れているわけだが、最近、自分で勉強するようになって、その使い方の上手さが判るようになった。もちろん仮説や通説を大胆に取り入れすぎている節もあるんだけど。

    ってゆーか。エヴァから未だ抜け出せない自分を再発見。素直に面白いんです。

  • 奇想の羅列「タイムスリップ・コンビナート」を読む

    笙野頼子「タイムスリップ・コンビナート」を読む。

    電話の主は「マグロ」か「スーパージェッター」か?

    はい。帯の文句からして、なんぞこれ?である。前出の「杳子・妻隠」と同じ芥川賞でも、時代が違う奇書と呼べるような作品。最初の数ページで投げ出そうかと思ったが、たった50ページほどなので読了してしまった。

    現実と幻の境界で揺れる主人公の意識に乗っかってしまうと、何かを理解できたような不思議な読後感を覚える。頭がからっぽだったから良かったのか。少し自分の読書の幅が広がったかな。

  • 杳として杳子は知れず、「杳子・妻隠」を読む

    古井由吉「杳子・妻隠」を読む。

    先週末からまた頭ん中がおかしくて、ひたすら本に逃避行動中。積ん読の中から芥川で未読のものを読みふける。そして、はじめて古井由吉作品に出逢う。

    「作家の読書道」だったか、日経の「あとがきのあと」だったか、作家自身がくり返し読むことの多い作家として、よく名前が挙げる人だな、くらいの認識はあった。出だしの数ページで理解。情景の描き方がばつぐんに上手い。文字からなる文章が頭なの中で美しい映像に昇華していく。素晴らしい感覚にひたりながら読み進めた。

    杳子(ようこ)は深い谷底に一人で座っていた。

    この不思議な出会いからつむがれる、傍から見ればどこかおかしな色恋沙汰。作中で杳子は一言も「美しい」と評されないが、読者は美しいはずだと確信させられる。僕は正直、エロさを感じて萌えた。久しぶりに感情を揺さぶられるような小説体験をした。傑作。

    「妻隠」もまた良し。しばらく古井由吉作品を追いかける。

  • 古井由吉を読む

    今日は週末でもないのにぽっかり時間があって、たまたま届いていた古井由吉の本を手にした。彼の著書は初めて。これが心に響く。絵でも映像でもなく、言葉がこれほど素晴らしい描写をできるものなのかと驚く。風景も、人も、それに関わる全ての事象をこれほど繊細に、何より美しく。感動している。