投稿者: momozome

  • アラン幸福論

    アランの「幸福論」を読む。

    幸福「論」となっているが、細かく命題ごとに章立てされており、言葉を定義することに生涯を費やしたアランらしい。定義集に具体例を加味し、判りやすくした散文集のような感じ。

    自分をよく見据えて生活を営むこと、社会的な礼儀を持つこと、健全な身体によって心の平静を得ること…などに重きが置かれている。すべての不運やつまらない物事に対して上機嫌にふるまえと言う。この人は楽観主義者なのだ。励まされるし、また再読したいと思う。

    ただ本書は日本語が読みにくい。同じく神谷幹夫訳の「アラン定義集」ではあまり気にならなかったのだけど…白井健三郎訳を買いなおそうかと思う。

  • 月刊遠藤久美子

    月刊遠藤久美子」を観る。

    月刊シリーズ。写真、蜷川実花。被写体、遠藤久美子。2003年の作品。

    遠藤久美子は好みだ。このシリーズは被写体となる人物に思い入れが深い人が、たまに買う場合が多い。そしてエロいことが期待される。加えて、その対象の印象をぶち壊す傾向が強いように思う。

    その前提を知っていれば、この1冊はとても良い作品だと思うのだけど、Amazonレビューで酷評されてる…これは残念。蜷川さん、この頃は確かに自分の世界が(悪く言えば)パターン化してきてけど、やっぱり、女の子の魅力を存分に引き出す力を感じるから。

    エンクミ。純粋無垢ともてはやされた頃の彼女の、まったく違った一面を写している。

  • 紗央里ちゃんの家

    紗央里ちゃんの家」を読む。

    2006年の日本ホラー小説大賞・長編賞受賞作ではあるが、苦肉の受賞かと思う。同賞の中だけで挙げても、和製ホラー独特の雰囲気なら昨年の「余市」が、おぞましい描写なら2003年の「姉飼」に遠く及ばない。

    ま、あくまで新人賞と思えばこんなものか。長編にしては短いし、それにしては冗長的。しかし不気味な味わいもそこそこあったので、今後の作品に期待します、矢部嵩さん。

  • ファイアズ(炎)

    ファイアズ(炎)」を読む。

    よく立ち寄る本屋に村上春樹の翻訳本コーナーが特設されていて、まんまと手に取ってしまった。僕がレイモンド・カーヴァーについて知っていたのは、彼が酒飲み(だった)ということだけ。それで選んだこの一冊が凄まじく面白かった。大当たり。

    エッセイ、詩、短編からなる。エッセイで彼の人生の片鱗に触れ、彼の「書く」ことについて知り、カーヴァーという人間に強く惹かれる。その後に連なる詩、特に酒に纏わるものが深く印象に残る。そして秀逸な7つの短編。特に「嘘」は、彼の人生における深い悲しみや弱さが伝わってくるようで、心を揺さぶられる思いがした。本人によるあとがきも必読。

    村上春樹による解題で、よりこの1冊の価値をかみ締める。

    訳者とカーヴァー作品との出会いとなった「足もとに流れる深い川」等、より成熟したヴァージョンを含む七短篇と詩、作家としての来し方を記す秀逸なエッセイ。多彩な魅力を凝縮する自選作品集。

    彼は自分の作品をくり返し手直しする人だったらしい。それでより成熟したヴァージョンという紹介がされている。「嘘」や「足もとに流れる深い川」は別バージョンも読んでみたい。

  • 塩狩峠

    塩狩峠」を読む。再読。

    クリスチャンホームで育ったので、中高生の頃は必読の書といった趣があり何度か読んだ。少なくとも15年ぶりの再読。描かれるテーマは自己犠牲。その自己犠牲とは、キリストが人間の罪の身代わりとなって十字架に…の部分だ。以前読んだ時には、そんなキリスト教賛美の部分が鼻についたが、読み直したらそうでもないと感じた…歳のせい?やはり名作は名作、泣かされた。