投稿者: momozome

  • 中島らもの遺作が掲載された「蒐集家(コレクター)」を読む

    井上雅彦「蒐集家(コレクター)―異形コレクション」を読む。

    ホラーもので有名な井上氏編のひとつ。シリーズ全てを読んでいるわけではないけど、内容の濃さは折り紙つき。このコレクターと銘打った一冊は、やや蒐集癖のある自分にとって特に楽しめるものだった。

    一番の目当ては中島らもの「DECO-CHIN」だ。彼の著書の多くは読んでしまったので、こうやって小さな作品を追い回している。もともとおどろおどろしい雰囲気をもっている人だと思うけど、おお、こんな一編も書くような人だったのか。

    恐怖と、どこかこっけいな様、堪能した。

  • 独裁者たちも学んだ「群衆心理」を読む

    ギュスターヴ ル・ボン「群衆心理」を読む。

    発刊は1895年、民主主義が進展して群集が時代を動かすようになった頃。

    ヒトラー、ムッソリーニ、レーニンら、現実の独裁者たちにも利用されたという、社会心理学の名著。古臭さはあるが、基本中の基本が書かれている。断言によって議論を否定し、反復によって論証を避け、感染によって世論が形成されるのだ。

    扇動を避けて最良の選択をするためにお勧めの本。もちろん独裁者を目指すためにもお勧めだ。

  • 自殺を流行させた「若きウェルテルの悩み」を読む

    ゲーテ「若きウェルテルの悩み」を読む。

    毒書案内」に載っていたので手にとる。僕にはあまり毒ではなかった。

    青年が既婚女性への思いに悩み、自殺をする話です。彼の苦悩をつづる手紙、ついに訪れるラストシーンへの構成はみごと。

    本作が発表された時は若者の間で自殺が流行ったそうだ(1774年)。

  • 第130回芥川賞「蹴りたい背中」を読む

    綿矢りさ「蹴りたい背中」を読む。

    第130回芥川賞。文庫古本を見つけたので手にとる。

    思ったよりまともな作品。今の若者が抱える思いが伝わってくる。周囲の人間を見下しながらも、精魂を枯れ果てさせるような孤独に悩み、ちょっとした出来事で自信が揺らぐ彼女たち。

    蛇足。読んだ後、世間ではどんな評価なのかとネットを歩く。辛らつな意見も多いね。今回の受賞作品についてもメディアで、あーだ、こーだ言ってる人が鼻に付く。芥川賞は純文学の新人に与えられる賞なわけで(略

  • バロウズ「夢の書―わが教育」を読む

    ウィリアム・バロウズ「夢の書―わが教育」を読む。

    バロウズである。あの山形先生の訳である。

    バロウズの遺作長編。

    特に老いてからの父母や兄との関係などが描かれ、めずらしく(ひょっとしたら彼の著作の中で唯一)内省的な作品。自伝的な要素が強い。

    断片的に書かれてきたものを集めて編集したものであるため、まさに表題通り夢のような構成。もともとカットアップも夢のようなものか。