「タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち」を読む。
面白い。言うなれば、サイエンス「ノン」フィクション。ただし未完(そりゃ、そうです。残念なことではありますけど)。
登場人物は、アインシュタイン、ティエンドラ、エディントン、ホーキング、キップ・ソーン…思考実験、証明、間接的な証拠の探査…タイムマシンは現実に研究競争されている科学で、この本は超常現象を取り上げたものではない。
世界最高の頭脳を持つ人々が、互いの意見、心情、何より科学的な根拠を持ってせめぎあっている。人が時を操る術は否定されていない。
現代の物理学の実験は、ある事実をはっきり如実に示している。それはタイムトラベルが可能なばかりか、自然の一部として周囲のあらゆる場所で起こっていることとだ。(中略)一方のグループは、現在の物理学がタイムとラベルの必然性を示すなら、そのどこかに誤りがあるに違いないと主張する。
何とも興奮するじゃないですか。
本書は時代背景を織り交ぜながら、物理学者の研究に迫る。素人が手を出せないような難しい数式などは抜き。また、本書には面白い工夫がある。おおむね20世紀以降の物理学に関係すると認めがたい説明の部分
を明確に区別してくれている。これで下手な注釈を抜きに、時系列に沿って、SFや映画と絡め、物理学者たちの意図と成果をがつがつ読み進むことができる。
量子テレポーテーションと言われるものがある。情報を時間経過なしに別の場所へ送る技術である。その情報を元に物質を再構成できるなら、時空を超えて移動したことになり、タイムマシンの可能性を感じさせる。
科学者は空想と現実の違いをわきまえていて、現実のほうが重要だと認識している。だが、タイムトラベルは単なる夢でなく、まったく現実的なものと予想される。
今、観たり読んだりしているSFは、現実になる日が来るのかもしれない。
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