投稿者: momozome

  • キリンヤガ

    キリンヤガ」を読む。傑作。

    絶滅に瀕したアフリカの種族、キクユ族のために設立されたユートピア小惑星、キリンヤガ。楽園の純潔を護る使命をひとり背負う祈祷師、コリバは今日も孤独な闘いを強いられる…

    個人と民族、民族と国家。歴史と革新。人間と科学。描かれるエピソードがすべて、今の自分の世界にも通じ、葛藤を覚えながら読んだ。作中でコリバがキクユ族に伝わる寓話を何度も語るが、この小説自体がSFを用いた寓話なのだ。

    これほど没頭した小説も久しぶり。読者に多くを考えさせ、大きな感動や感傷を与える、そんな素晴らし一冊だった。

    長編オムニバスで、10の短編から成っている。試しに読むなら、表紙絵になっている「空に触れた少女」と、表題作でもある「キリンヤガ」を推す。短編として気楽に読み進むこともできるので未読の方はぜひ。

    余談。僕はプロローグを先に読まない方が楽しめたのではないか、と思った。

  • 蚊はなぜ人の血が好きなのか

    蚊はなぜ人の血が好きなのか」を読む。

    雑学的好奇心から手にした本だったが、蚊の生態を詳細に紹介し、伝染病、公衆衛生など幅広い研究を報告している啓蒙書。雑学の枠を超えて面白かった。

    原題は「Mosquito: A Natural History of Our Most Persistent and Deadly Foe」で、僕レベルの訳でも「蚊:私たちにとって最もしつこく危険な敵の博物学」とかになるかと。この邦題をつけた人(または出版社)は、本書の価値を落としちゃってる。

  • 知的生活の方法

    知的生活の方法」を再読。

    初めて読んだのは10年以上前。梅田望夫さんが「ボロボロになるまで読んだ」とブログに書かれていたので、本棚から引っ張りだして再読する(父の書斎から持ち出した記憶あり。ごめんなさい)。

    1970年代ベストセラーの本書は、たまに科学的な間違いもあるが、今なお色あせていない。読書、散歩、結婚、さらにはビールやワインについてまで、著者の実体験を通し知的生活を送るためのヒントが数々示されている。

    今回とても印象的だった一節、

    個人の「蔵書」はいくら小さくても、その人の「図書館」なのである。

    その図書館から気まぐれに取り出した本をパラパラと再読した時、その本が持つ真の価値に気が付くことがある。その体験の積み重ねが、次の価値を見出す本能になっていく……といったことが語られている。その通りだ。

    あらゆる物のデジタル化が進む情報技術革命「中」の現代、本のユーザビリティに勝る技術は生まれるだろうか。

  • 2週間で小説を書く!

    2週間で小説を書く!」を読む。

    最近の積ん読に多いのは小説を書くための実用書。小説を書いてみようと思っているのではなく、小説を書くという視点を学ぶことで、小説をより楽しく、できればより有意義に読めるのではないかと思ったからだ。

    その意図において非常に自分のプラスになる一冊であった。

    読んで強く感じたことは2つ。小説を「書く」ことにおいて重要なのは、作品を完結させること、作品を書き続けること。著者は小説を書くことに別段の才能が不可欠だと言ってはいない。が、この2つにこそ、大きな才能を要することなんじゃないか。

    この主題はともかく。2週間で小説を書くと銘打っているので、14日間で行う課題と、それに付随するエピソードが詰め込まれている。これを読むだけで、次に出逢う小説との接し方が随分と良い方向に変わるだろうと思った。良書。

  • 自殺について 他四篇

    自殺について 他四篇」を読む。

    ショウペンハウエルの著。面白い。マイブーム継続中。

    高校生の頃の教科書と、考えすぎな性格でのみ哲学に触れてきた僕にとって、彼の著作は面白いの一言に尽きる。彼の著を軸にして触れてみたいと思う古典哲学が増える今日この頃。

    例によって面白かった一節を挙げる。

    自発的にこの世を去っていく人達に対して名誉ある埋葬を拒んだりするのである

    生きていてこそナンボ、と気軽に言えるなら、個人の強い意志で決定された結果がそれだった場合どうするの?って話。仮に友達が死にたいと言えば僕は全力で否定する。でも、他人に絶対に間違いだと指摘された自分の意思も貫こうとする。その矛盾についてどう考えるべきか。

    なーんて。実はこの部分だけ引用するのは、ずるいんだ。あくまでもユーモアを忘れずに読むと、自分の思考の幅が広がっていく、そんな本。真理にたどり着けるかは別として、思考する楽しみ、思考する意味を体感できる。