「キリンヤガ」を読む。傑作。
絶滅に瀕したアフリカの種族、キクユ族のために設立されたユートピア小惑星、キリンヤガ。楽園の純潔を護る使命をひとり背負う祈祷師、コリバは今日も孤独な闘いを強いられる…
個人と民族、民族と国家。歴史と革新。人間と科学。描かれるエピソードがすべて、今の自分の世界にも通じ、葛藤を覚えながら読んだ。作中でコリバがキクユ族に伝わる寓話を何度も語るが、この小説自体がSFを用いた寓話なのだ。
これほど没頭した小説も久しぶり。読者に多くを考えさせ、大きな感動や感傷を与える、そんな素晴らし一冊だった。
長編オムニバスで、10の短編から成っている。試しに読むなら、表紙絵になっている「空に触れた少女」と、表題作でもある「キリンヤガ」を推す。短編として気楽に読み進むこともできるので未読の方はぜひ。
余談。僕はプロローグを先に読まない方が楽しめたのではないか、と思った。
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