僕とパニック障害

僕はパニック障害(*1)かもしれない。

はじまり
2005年の秋、ある発作が頻繁に起きるようになった。これを言葉で説明するのは難しい。とにかく感情と情景が頭に溢れ動けなくなる。横断歩道を渡っている途中でも次の一歩が踏み出せなくなり、職場で人から声をかけられても反応することができなくなった。追い詰められて心療内科へ駆け込んだ。

その時、問診表の「特に困っている症状」欄に書いたこと。

  • 急に不思議な感情や情景がわく
  • 強い不安、恐怖
  • 動けなくなる
  • 過去に経験したように思うが、記憶と結びつかないので、とても混乱する

カウンセラーと30分、さらに先生も交えて30分のカウンセリング。病名は告げられなかったが、仕事の忙しさと睡眠に問題があると指摘された。抗うつ薬と睡眠薬が処方されたので、勝手に自分はウツになったのだと思った。意味も判らない病ではなく、確かに多忙な時期だったので、正直ほっとしたことを覚えている。

だが違和感もあった。発作への恐れから職場へ通い難くはなったが、無気力ではなかった。この頃は知人のベンチャーを起す手伝いをしており、自分自身も出資者の一人であったので、辛くても意欲的なつもりだったからだ。僕は本当にウツなのだろうかと。

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パニック障害、かな
はじめの1ヶ月は毎週の通院で、採血などもあったが、とにかくカウンセリング中心。次の3ヶ月は2週に1度になり、治療方針と薬の調整。この頃になると少し発作の頻度や強さもやわらいで、自分でも精神疾患に関する書籍を読むなどして勉強をはじめた。そして4週に1度(*2)で済むようになった頃、先生に病名を尋ねてみた。

「はっきりとは言えないし、知る必要はないと思うけど」と前置きされた上で「パニック障害、かな」と言われた。「病名に肩入れしちゃいけないよ。ゆっくりつきあっていけば良くなるよ」の言葉と共に。

ああ、やっぱりそうか。

実は自分で勉強するうちに、そうではないかと思い始めていた。またさらに落ち着くにつれ、軽い発作は幼い頃から経験していたことを思い出した。当時は不思議な感覚を楽しんですらいたが、親戚の家に泊まるなど強いストレスを感じた時に起こっていたのは間違いない。眠るのは今も昔も苦手。持病がこの歳になって表面化しただけとも言える。

ウツと治療
パニック発作は強烈な恐怖と混乱であるため、それをいつも恐れ(予期不安)、よりひどい発作が起こるという負の連鎖がはじまる。また発作が起きると身動きがとれなくなるので、見知らぬ人や場所には近づかないようになる(広場恐怖)。これらが続くと本当にウツになってしまう(二次的うつ)。という典型的な進行を僕もたどることになった。

今でこそ現実逃避だったと判るが、書籍で読んだ通りのウツを演じ、強い睡眠薬(*3)を切望して意識を失うように寝る時期もあった。幸い先生が根気よく、いつも「よくなってきた」と言ってくださり、少しずつ症状は改善。相性の良いソラナックスという薬(*4)に出会えたこともあり、抗うつ薬を飲まずに済むようになった。

また治療中、カウンセラーと僕とで気が付いたことがあった。最初の問診で、

過去に経験したように思うが、記憶と結びつかない

と書いている。感情はともかく、頭をよぎる情景があまりにリアルなので、既視感(*5)かと疑われるほどだった。しかし実は、夢の中での体験がフラッシュバックしているだけだと考えたのだ。先生もこの意見を尊重してくださった。質の悪い眠りでは夢も強く記憶されるので、睡眠の改善に重きをおくようになった。

僕とパニック障害
ウツまで発症した頃と比べ、僕は随分良くなった。しかし治癒はしていない。そもそも治る病ではないのかもしれない。また、最近は心の病と考えるより脳機能障害として扱われるようになっている、とも聞く。逆に、そもそも話が大きすぎて、僕の性質であるだけかもしれない。

いずれにせよ、上手に付き合っていくことはできる。寛解(*6)を目指すこともできる。この出来事は僕からいくつかの夢や仕事を奪った。でも、その上でまた生きていくこともできると学んだ。

最後に
今になってこのエントリーを書いた理由は、今春、またひどい発作が現れるようになったから。だからこそ学んだことを忘れないために。また乗り越えられると確認するために。

まだ病名も聞いていない頃、ブログに「ウツかも」と書いことがある。すぐに「いつでも休みに来てください」とメールをくださった方がいた。友人や知人は上手にさりげなく付き合ってくれた。多くの人が「僕は流行のウツだ、繊細なんだ、仕事できなくてもしょうがないんだ」という自暴自棄から引き上げてくださった。感謝しています。

不安を煽るようなことを書いておきながら申し上げることではありませんが、あまりご心配なきようお願いします。今までと変わらず見守っていただければ、また必ず良くなります。

  1. パニック障害: 突発的な動悸(どうき)やめまいなどの発作に繰り返し襲われ、再発への恐怖心にとらわれる精神障害。不安神経症の一。恐慌性障害。パニック-ディスオーダー。
  2. 4週に1度: 通院する間隔は処方される薬にも関係する。強い薬は一度に2週間分までしか処方できない等。
  3. 睡眠薬: ひどい時は、ベゲタミン、マイスリー、ハルシオン、ベンザリンを併用していた。怖くて量は書けない。これは僕が強く希望して、先生が一時的に許してくれた処方。実際は先生の言う通り、生活もできなくなった。現在はマイスリーとベンザリン。
  4. ソラナックス: アルプラゾラム。ベンゾジアゼピン系の緩和精神安定剤、抗不安薬の一種。マイナートランキライザー。副作用が少ない安全性の高い薬とされるが、長期服用による依存の警告もある。
  5. 既視感: デジャヴ。実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じること。統合失調症の発病の初期に現れることがあるとされる。
  6. 寛解: 病気の症状が軽減またはほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態。治癒とは異なる。

※ 病院や先生についてのお問合せはご容赦ください。
※ ここに書いたことは僕、一個人の体験です。

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