「ルポ最底辺―不安定就労と野宿」を読む。
社会の底辺。それは、戦中戦後、高度経済成長期、バブル以降、それぞれの時代変化の中で、過去も現在も存在し続けている。社会の底辺で生きている人々がいる。その歴史と現状を力強く訴えるルポタージュ。著者の生田武志氏はこの本ではじめて知った。キリスト教者であり、ボランティアに取り組み、あらゆる底辺を見続けてきた方だからこそ書きえた一冊。
言葉としては知っていた、ホームレス、浮浪者、ワーキングプア、ネットカフェ難民…と呼ばれる人々。同じ国に、これほどの惨状があるとは、正直僕の想像を超えていた。僕はバカの壁によって、彼らを直視したことがなかったのだ。そう「バカの壁」を書いた人ですら、日本ではホームレスが死ぬことなどない
と言っているように。
印象的だった部分を少し紹介。
海外の難民問題に関わってきた「国境なき医師団」は、ここ数年、日本の野宿者の医療問題に関わってきた。「国境なき医師団」の先進国での診療所開設は異例であり、日本は本格的な「支援対象国」である。(中略)大阪の「国境なき医師団」のメンバーと話した事があるが、前記の大阪府立大学の研究データを元に「大阪の野宿者のおかれている医療状況は海外の難民キャンプのかなり悪い状況に相当する」と言っていた。いわば、大阪という大都会の中に「第三世界が広がっている状況である」。
本書には、生活保護、社会福祉、医療行政と、不安定就労との現状、問題点も示されている。また解決案にまで言及している。ワイドショーや週刊誌を騒がす「格差問題」ではなく、真実を知るためにお薦め。それでも、これが全てではないと思えて、恐ろしさを覚えた。
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