杳として杳子は知れず、「杳子・妻隠」を読む

古井由吉「杳子・妻隠」を読む。

先週末からまた頭ん中がおかしくて、ひたすら本に逃避行動中。積ん読の中から芥川で未読のものを読みふける。そして、はじめて古井由吉作品に出逢う。

「作家の読書道」だったか、日経の「あとがきのあと」だったか、作家自身がくり返し読むことの多い作家として、よく名前が挙げる人だな、くらいの認識はあった。出だしの数ページで理解。情景の描き方がばつぐんに上手い。文字からなる文章が頭なの中で美しい映像に昇華していく。素晴らしい感覚にひたりながら読み進めた。

杳子(ようこ)は深い谷底に一人で座っていた。

この不思議な出会いからつむがれる、傍から見ればどこかおかしな色恋沙汰。作中で杳子は一言も「美しい」と評されないが、読者は美しいはずだと確信させられる。僕は正直、エロさを感じて萌えた。久しぶりに感情を揺さぶられるような小説体験をした。傑作。

「妻隠」もまた良し。しばらく古井由吉作品を追いかける。

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