残酷物語かのような「心は実験できるか」を読む

心は実験できるか―20世紀心理学実験物語」を読む。

本書は科学ノンフィクションというか、有名な心理学実験を、まるで物語のように描いている。どれも有名な実験であり、確かに現代の心理学の進展に寄与したものもあるだろう。しかし倫理的問題を抱えたこれらの実験を、賛否両論あると一言では片付けることはできない。

人の好奇心がいかに恐ろしく、残酷であるかを教えられる。人が理性を失ったかのような、あるいは意図的に捨ててまで、同じ人を弄ぶ衝動はどこからくるのだろうか。

とりあげられる10の実験は、

  1. スキナー箱を開けて―スキナーのオペラント条件づけ実験
  2. 権威への服従―ミルグラムの電気ショック実験
  3. 患者のふりして病院へ―ローゼンハンの精神医学診断実験
  4. 冷淡な傍観者―ダーリーとラタネの緊急事態介入実験
  5. 理由を求める心―フェスティンガーの認知的不協和実験
  6. 針金の母親を愛せるか―ハーローのサルの愛情実験
  7. ネズミの楽園―アレグザンダーの依存症実験
  8. 思い出された嘘―ロフタスの偽記憶実験
  9. 記憶を保持する脳神経―カンデルの神経強化実験
  10. 脳にメスを入れる―モニスの実験的ロボトミー

子供を箱の中で育てる実験、電気ショックを強制させる服従実験、脳の一部を切除する実験、記憶を捏造する実験…著者はそれらについて、

科学を、問題を体系的に追究して普遍的な法則に相当するものを生み出すものと定義するならば、心理学はその条件を満たすことに失敗し続けてきた。

と断じる。

読んでいる最中、731部隊の実験、ヒロシマ・ナガサキでの実験、スタンフォード監獄実験(とても恐怖を覚える「es」という映画が印象的)、なども思い浮かべた。

(関連)
「心理テストはウソでした」を読む

(追記)
心理学は科学か?という命題は存在する。僕は”これから”科学になっていくのだと思っている。

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